私たちのオススメ
〜しつこい副鼻腔炎に漢方薬が効果的です!!!~
川元尚子
風邪をひいた際に鼻づまりや黄色い鼻水が出ることがあります。
鼻や目の周りにある副鼻腔という空洞に炎症が起こることによって、これらの症状がおこります。
症状が出てから4週間以内の場合を“急性副鼻腔炎”、3か月以上続く場合を“慢性副鼻腔炎”と言います。
症状としては鼻づまり、黄色や緑色の鼻水、鼻水が咽に流れ込む後鼻漏、顔面の痛みや圧迫感、頭痛、発熱など。
病院では抗生剤を投与されることが多いですが、なかなか症状が改善されない場合は
漢方薬をお試しください。
中医学では「鼻の病気は肺から治す」と考えています。
副鼻腔炎は鼻の炎症ですから、肺の熱を取り除く漢方薬を使います。
『鼻淵丸(びえんがん)』という薬は鼻の通りを改善する生薬や、熱を取り除く生薬からできている丸剤です。
蒼耳子(オナモミの実)や辛夷(モクレンのつぼみ)は鼻の通りを良くします。
菊花、金銀花(スイカズラのつぼみ)は清熱解毒作用があり、茜草(アカネ根)は血流を良くします。
このように『鼻淵丸』は鼻の奥の炎症を取り除き、通りを良くする効果があります。それにより鼻づまり、後鼻漏、鼻の周りの痛みや頭痛の改善が期待できます。
症状が強い場合や慢性の炎症の場合は、同じように肺の熱を取り除く効果のある「辛夷清肺湯」という薬を、『鼻淵丸』と一緒に服用することをお勧めします。
慢性の副鼻腔炎でも1か月ほどの服用で症状の軽減を感じられる場合が多いようです。
不快な症状でお悩みの方はご相談ください。
※尚、『鼻淵丸』は製造が中止になったために、当店の在庫限りの販売となります。ご了承ください。
~ びっくり漢方薬~
兒玉眞理子
漢方薬の材料は、自然界の植物・動物・鉱物などです。一番多いのは植物です。身近にある動物由来のものは、鹿の角・牛の胆石・亀の甲羅・レイヨウの角・膠・骨の化石・牡蠣の殻などでしょうか。鉱物は、石膏などあります。
これらはポピュラーで、あまりびっくりしないのですが、漢方の昔の書物にはえっ?と言うものが載っています。
「亂髪(らんぱつ)」 女性の抜け毛を集めたもの。切った髪はダメ。パーマもダメ。髪をすいたときに串についてくる毛根のついた抜け毛を集め、黒焼きにして使う。効能は、気を通じ、寒を去るので、大小便を利する。
「白魚(はくぎょ)」 衣服・書物などにたかるシミ虫。効能は小便を利し強張りを緩む。
「竈中黄土(そうちゅうおうど)」 古いかまどの内側の上部でよく火に当たり焼けた所の焼け土。効能はよく冷えを退け、鬱滞をとり、血を治す。つわりに効果があると言われる。
動物の糞もあります。
「鶏屎白(けいしはく)」 雄鶏の糞の白いところ。効用は、しこりを解き、熱を去る。
他に、「雄鼠屎(ゆうそし)」牝鼠の糞、「犬屎(けんし)」白犬の糞、「馬通汁(ばつうじゅう)」馬の糞を絞った液、「牛洞(ぎゅうどう)」牛のゆるい糞、と身近な動物のものは一通りあるようです。さらに、「人尿」・「人糞汁」も載っています。漢方医学は初めから人体実験。あらゆるものを実際に試して薬になるものを探していったわけですから、漢方医学黎明期の人々はすごい勇気があったのですね・・・。
「人垢(じんこう)」人の皮膚を擦って取ったアカ。今では考えられませんが。解毒作用があるのだそうです。
さらに驚くのが、糸と布です。
「新絳(しんこう)」新たに赤く染めた絹糸。本来、茜草で赤く染めたものをいう。効用は、婦人の身体が疲れて血下って止まないものを治す。
「緋帛(ひはく)」赤く染めた絹の織物。茜がよい。効能は傷・出血を治す。
「久用炊単布(きゅうようすいたんふ)」久しく使い古した台所の布巾。食器を拭いた布巾であって、雑巾ではない。穀類を蒸すのに使っていたものでも良い。要は、穀気が布にしみこんでいるのが大切、穀気は気血の巡りを良くする。
この久用炊単布を用いた処方が「金匱要略」という漢方の古典に載っています。
【馬墜】 効能は、筋骨の怪我を治す。材料は以下のもの。
大黄1.0g
緋帛(手くらいの大きさ)(黒焼きにする)
亂髪(鶏卵大)(黒焼きにする)
久用炊単布(30㎝四方)(黒焼きにする)
敗蒲(畳表の古いもので代用)一握り10㎝くらい
桃仁3.0g
甘草2.0g
大黄以外の7つを男児の小便で煎じ、よく煮えたころ、酒3酌を加え、次に大黄を入れ、滓を去り、3回に分けて温服する。
服用の前に、畳表を煮出してその汁で湯あみする。
啞然とする処方で、本当に効くの?と思ってしまうのですが、【馬墜】は、絳墜打その他の外傷に対する救急法としては、素晴らしく、“神効”あるものだそうです。古方(漢方の一派)の先生には、これらの材料を黒焼きにした久用炊単布で包み、すぐに使えるよう用意しておられる方もあります。
~膝の内側の痛みに良かったものは!!~
兒玉眞理子
4週間ぐらい前から、なぜか急に右ひざの内側が痛くなりました。ひねった? その覚えはないけど。
左ひざと比べると内側の凸凹が少ない、つまり腫れています。膝全体的にも少し太い感じがします。曲げると痛い。重いものを持って歩くと悪化します。立ってじっとしていた後は良くなく、座っていても足を動かさない時間が長いとその後曲げにくく痛みが増します。ただ、骨ではなさそう。「鵞足炎」(がそくえん)だろうか?
以前「鵞足炎」と診断されたお客様がお見えになったことがありました。仕事場が冷蔵庫で、冷えが原因ということでした。その時は『痛効散』(麻杏薏甘湯)と『霊鹿参』ですっかり治りました。それで、麻杏薏甘湯や薏仁湯をのむと少し軽くなりました。『霊鹿参』に代わる『活命参』は日頃からのんでいます。
母の介護をしていたころに「梨状筋症候群」になって以来、ときどき整骨院に通っているのでついでに膝を見てもらうと、膝の上下の筋肉がガチガチに硬くなっているとのこと。ほぐしてもらうと帰りは少し楽になっていました。でも、その2日後に古雑誌を捨てるために足を投げ出して2時間くらい作業したら、翌日、まともには歩けないくらいに悪化!
困りました。このままではまずい。そうだ!『夢三七』(田七人参)は効くのだろうかと思いたち、10粒のみました。そして1時間くらい経った時、ふと痛くないことに気づきました。これは良いかも!! 10粒ずつ1日2~3回のんでいると、日に日に痛みは引いてきました。
漢方では痛みは瘀血ということになっています。田七人参(夢三七の成分)は血流を良くするものなので、それが良かったのでしょうか。ともかく、助かりました!
~鹿茸と認知症~
兒玉眞理子
漢方では、脳=髄海(髄が満ちているところ)であり、脳の健康を保ち萎縮しないようにするためには、髄の原料とも言える精を補うことが重要であり、体内に精を生じさせる鹿茸が用いられてきました。
2021年に長春中医薬大学などの研究チームによって、鹿茸ポリペプチドが老化モデルマウスの学習能力と認知能力を有意に改善したとする論文が発表されています。この論文によると、マウス血清中の抗酸化酵素の活性が上がるとともに、有用な腸内細菌を増やしたとしています。また、ATP産生も増加させて、これらの作用の結果、マウスの認知機能が改善されたそうです。
鹿茸に多く含まれるポリアミンの一種であるスペルミジンに関して、オーストラリアのグラーツ大学分子生物学研究所が論文を発表しています。高齢マウスに、スペルミジンを経口投与し続けた結果、スペルミジンは血液脳関門を通過して脳まで達し、脳の海馬のニューロンを活性化したことが確かめられた他、ヒトの食物摂取頻度と認知機能の低下に関する調査では、食事からのスペルミジン摂取量が多いほど認知機能の低下が少なかったことがわかっています。
鹿茸に多く含まれるスペルミジンは細胞内でも合成されるほか、ある種の腸内細菌によっても合成されます。また、食品にも含まれますが、体内のスペルミジンは加齢とともに減少していくことが知られています。
鹿茸の効果がすべてスペルミジンによるものではないにせよ、古典的に知られる鹿茸の薬効を裏付けるもののひとつではないでしょうか。