腸内細菌に関する最近の研究
☆うつ病患者の腸内細菌
国立精神・神経医療研究センター神経研究所とヤクルト本社を中心とする共同研究グループは、43人の大うつ病性障害者と57人の健常者の腸内細菌について、善玉菌であるビフィズス菌と乳酸桿菌の菌数を比較したところ、うつ病患者群は健常者群と比較して、ビフィズス菌の菌数が有意に低いこと、さらにビフィズス菌・乳酸桿菌ともに一定の菌数以下である人が有意に多いことを明らかにしました。この結果から、善玉菌が少ないとうつ病リスクが高まることが示唆されました。(Jourmal of Affective Disorders on line 2016,5,24 )
☆腸から脳への情報伝達
腸内フローラ(腸内細菌群)から中枢への情報伝達機構は、現在もっともホットな研究領域であり、腸管神経細胞のTLR4受容体を介した神経活性化、短鎖脂肪酸によるEC細胞からのセロトニン分泌、炎症細胞応答、腸内細菌の分泌する種々の生理活性物質などの複雑な系の理解が進みつつあるようです。
有用菌によって産生される短鎖脂肪酸の中でも、とくに酪酸には、抗うつ作用や認知機能改善作用があるようで、盛んに研究されているようです。こういった基礎研究は、消化管環境を改善し、有用菌を増加させるライフスタイルが、ストレスに強い、うつになりにくい、認知機能を維持する機能につながる可能性を示すものであり、大変興味深い点です。(資料1)
うつ的傾向があると思ったら、腸内細菌にも注意を向けてみてはいかがでしょうか。
☆水溶性植物繊維は有用菌のエサとなって、腸内環境を変える
この数年の研究結果に基づいて、「善玉菌」は、食物繊維を発酵させ、短鎖脂肪酸を生成し、その短鎖脂肪酸が局所における腸管粘膜細胞の生存や機能維持に利用されているだけでなく、腸管免疫にも影響しているようです。そして、門脈を介して吸収された短鎖脂肪酸は、骨髄、脳に作用することなども解明されてきています。